その時、後ろから宮西の声がした。

「あれ?大嶋、なんだか背が伸びたみたい」

自転車のチェーンロックのダイヤルを回す手が、その一言で止まってしまった。


ゆっくりと後ろを振り返る。宮西はすぐ後ろにいて、俺の顔を見上げていた。

気付かなかった。去年の今頃は、宮西がほぼ同じ目線で俺のことを見ていたのに。


どうしよう、彼女に触れてみたくなってしまった。髪の毛が夕日に反射してとてもきれいだ。


ふと、澤田に失恋した宮西の頬に触れ、涙を拭うヒロの姿が頭の隅にちらついてしまった。


……だめだ。俺はあいつみたいに触れることができない。


「じゃあね、また明日、学校で」

「おう、気をつけて帰れよ」


遠ざかる宮西の姿を最後まで見送ることができなかった。

宮西が笑っていても、つらそうにしていても、俺は結局苦しくなってしまうんだ。


叶わない想いと、あいつへの……