天空の覇者

「巧さん…似合う?」

真っ暗な部屋にろうそくを灯した加奈子は、どこで持ち出したのかウェディングドレスを着ていた。

「加奈子…ああとっても似合うよ。しかし君も死ぬ間際の僅かな一時に女の幸せを選ぶなんてなかなかロマンチストだね」

二人は軽い微笑を浮かべシャンパンの栓を抜いた。

「悪党の最後に結婚式か…なかなか粋な演出だ。柳瀬君も歌ぐらい歌ってくれりゃいいのに…」

「集まってくれたお客さんにそんな事言うもんじゃないわ巧さん…ちょっとうるさいけど祝福してくれてるみたいだし…」

もはや爆撃の衝撃に耐えきれなくなった屋根が崩れ落ちる中祝杯をあげる二人に何の未練も残って無かった。