私、長岡美帆の至福の読書タイムをいつも邪魔するこの人は、一つ上の学年の多村涼介先輩だ。


そして誰が想像出来ただろう、業務放棄を繰り返すこの人が、現図書委員長であったりするから、私は異議申し立てたい。



「先輩、どうして図書委員になったんですか」




私は何度目になるのか分からないその質問を、今日も先輩に投げかけていた。


見た目で判断するもいけないことだが、先輩は私から見ても、とても華やかな人だ。

一見チャラいんです。
正直あまり関わりたくないタイプですね。



友達も多いようで、図書室意外で見かけると、いつもたくさんの人に囲まれている。


……圧倒的に女の子が多いけれど。


もうあれです、先輩はきっと女の子達の間でパワースポット的存在なんです。私はその横を、素通りしながらそんなことを思う時がある。


……あれ、違うか。先輩から御利益をもらったことがないですねぇ。


私が思考を他のところに飛ばしかけていると、先輩はいつもの決まった言葉を口にした。


「さーねぇ〜。みほりんは何でだと思う?」


ボーっと、うわ言のように呟いた先輩に私は小さくため息をつく。
いつもこれ、質問に質問で返されるのだ。


私はまた、読書を再開することにした。





図書委員の仕事内容は決まっている。
基本的には昼休み、放課後の図書当番で本の貸し出しがメインだ。


他にも図書新聞などの掲示物の作成、本棚の整理整頓、資料室の整理も何故か図書委員が受け持つこともある。


利用客がいなければその時間を読書にあてることが出来るので、まさに天職……とばかりに食いついた私は後で先輩の存在を知った訳で。


「ねーねーみほりん。つまんな〜い」


私はまた、ため息をつくしかなかった。