土方は戸惑っていた。
新選組の副長になって、それなりにいろいろ経験してきた自覚はある。
芹沢の暴行や組長たちの喧嘩なんてのは、ほとんど土方や山南さんが後始末をしたといっても過言ではない。
それに未来から来たらしい、きちがいな子供の剣壱と島原にいたその仲間の北凪。
そんなことを経験して、驚いても平常心を保つことが得意になったはずだ。
が、それでもだ。
土方は今、目の前にいる男に戸惑っていた。
「‥‥‥‥‥剣壱」
「何?」
「そいつが、もう一人の仲間とやらで間違いないんだよな?」
「うん」
「‥‥‥‥‥‥」
一度目を閉じてから、チラリとそいつを見やる。
目が合った。
すると旅商人のような格好をした男は、それはそれは美しく微笑んだ。
「っ、」
「(にっこり)」
透き通るような白い肌、流れるような真っ黒な髪、妖艶に細められる赤い瞳
この世の者とは思えないほど、不気味なほどに美しい男だ。
土方は自分の容姿を自覚している。
昔も今も、それなりに騒がれていたし恋文も幾度となくもらってきた。
島原に行けば嫌でも女がよってくる。
原田なんかもそれは同じで、北凪もかなりの美人だ。
斎藤や沖田だって、容姿はいい方である。
が、この男は今まで見てきた誰をも見劣りさせるような容姿だ。
島原の芸子のように厚塗りの化粧をしているわけでもない。
だが、本当に人間かどうか疑うほどに恐ろしく美しい。
自然と緊張する中、土方は改めて口を開いた。



