「だって、モタモタしてたら逃げられちゃってたかもしれないもん」


「う‥‥‥一理ある」


「でしょ?」


にっこりとした笑みを浮かべた少年に対し、若い男は更に顔を歪めた。


後ろの人達は「またか」とでも言いたそうに苦笑いをしている。


どうやら、今回のようなことはよくある様だ。


「あ、あの‥‥‥小さな隊士さん」


「ん?どうかなさいましたか?」


「これお礼。よかったらどうぞ」


女の人は風呂敷から小さな瓶を取り出した。


「え、お礼なんていいですよ」


「遠慮しないで」


少年が押し返すようにすると、女の人は少年に瓶を握らせた。


折れたのは少年の方で、少し困った顔をしながら、だけど嬉しそうな笑顔を浮かべた。


「えっと、じゃあ‥‥‥いただきます。お姉さん、ありがとう!」


「ええ」


女の人は笑顔を浮かべてから一礼すると、その場から去っていった。


「あ〜今日もいいことした!」


「お前なぁ‥‥‥」










浅葱色の羽織を来た集団。


〈新選組〉


京の街の治安を維持するため、幕府に雇われている組織である。


その新選組の隊士の1人。


〈桜木剣壱〉


京の街ではちょっぴり有名な、新選組の最年少隊士の少年である。





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