ああ‥‥‥とても気持ちが悪い‥‥‥


近藤さんを見ると、どこか悲しそうな顔だ。


「いい思い出がないんだ」


「それでも、聞きたいんだ」


包容力のある人なんだろうなぁ。


皆を見ていればよくわかる。


皆、この人についていく。


新選組のお父さんみたいな人。


「‥‥‥‥話したくない‥‥」


「そうか‥‥‥駄目か」


「ごめんね」


少しぎこちない笑みを浮かべて言った。


話せない。


話したらきっと、止まらない。


今までずっと心の中に閉まってきた。


これからも、きっと‥‥‥


それは変わったりしない。


「剣壱君、君から見てここはどうだい?」


「ん?」


「幕府のためなんて言ってはいるけど、ここにいる皆、それぞれの誠を背負っている」


「え‥‥‥」


近藤さんが、それを言うの?


ここのリーダーであるあなたが‥‥‥


『幕府のため』は、建前だと。


「人の正義なんてものはそれぞれで、ここにいる隊士の中には純粋に、京の町を、友を、知人を守りたい者もいる。私はそれを否定しない」


幕府の、国のためなんて大きなものではなく、
純粋に目の前のものを守りたい。


「それ、お役人さんが聞いたら怒られるよ」


「ははっ、そうだろうな。だが‥‥‥俺も初めは幕府のため、国のためと、そう働いてきたんだ」