新選組と最強少年剣士

井上さんの困ったお顔。


ああ、お父さんってこんな感じかなぁ。


‥‥‥叔父さんがいたらこんな感じなのだろうか?


「井上さんってさ、優しいよね」


「そうかい?」


「うん、料理も上手でさ」


井上源三郎 新選組六番組組長


僕にとって、目の前にいる彼はよくわからない人だ。


見た目は40前くらいで、非常に良い人だ。


だけど、敵と交戦すれば冷静に斬るし汚れ仕事も積極的にこなしているようにも見える。


稽古熱心で良い人で、真面目で人望も厚い。


彼の剣の腕はきっと、努力のたわものだろう。


「ねぇ井上さん」


「なんだい?」


「井上さんってさ、どうしてこの新選組に尽くすの?」


「‥‥‥‥‥‥え?」


「井上さんならさ、ここじゃなくてもやっていけると思うんだけど」


「うーん‥‥‥じゃあ剣壱君は、どうして新選組のために剣を振るってくれるのかい?」


「え」


思いがけない返しに、僕の思考は停止した。


‥‥‥信用を得るため。


でも、確かに今の僕の姿ならやり方はいくらでもあったかもしれない。


そうだな、今、強いて言うなら‥‥‥


「‥‥‥忘れないため、かなぁ」


「何をだい?」


「人を斬る感覚を。心を殺す感覚を」


「剣壱君‥‥‥」