罪深き者には制裁を





春香はいないのに
いないはずなのに

今目の前で俺を惑わす女性は


『春香なのか...?』


そう問うと


春香と瓜二つの社長は不適に笑うと



『残念、私の名前は藤堂冬香トウドウフユカよ』



その言葉に絶望感を感じた。



そりゃぁ当たり前か
春香の死は地元の新聞のみならず
ニュースにもなるほどの事件になった。

そんな春香が生きているわけがない。



『申し訳ございません。私の勘違いでございます。』



深々と頭を下げると


『気にしてないわ、あなたにはこの会社の秘密を知ってしまった以上私の秘書を勤めてもらいます。』


『会社の秘密』



そう俺が勤める会社は
藤堂化粧品。


国内でも売上ナンバーワンに入るほどの大手の企業だ。

藤堂化粧品は先代から代々続き
俺や会社の人は現社長藤堂保トウドウタモツだと思っていたのだが

その社長がつい先日病で亡くなったそうだ。

そして、今目の前にいるお方が
社長の娘の藤堂冬香さん。
正しく言えば現社長にあたるお人だ。



『この話は口の軽くない人にだけお伝えしてるの。秘書に任命したのもその為よ』


だからってなんで営業にいた俺なんだろうと思う。


別にもっと他の人でもいいはず。