トントン
『失礼します!』
そう言い開けた扉の向こう側。
『どうぞ』
と言ったその人物に一礼をし入室すると
先程同様の挨拶をする。
『河野恭一です。よろしくお願いします。』
深々頭を下げる。
『頭を上げて、これから秘書になる人の顔をよく見せてちょうだい』
社長の言葉に従い顔を上げる俺。
『っ!』
ここは最上階の社長室。
全面ガラス張りの日差しがいい社長室は
社長を背にした日差しは
それに向かい合う俺を直で照らす。
まぶしすぎて
社長の顔が見えない...
『フフっここは日差しがいいからね』
俺の様子に気づいた社長が
ウィンドウを下げる。
その瞬間。
一瞬なはずなのに
俺にはそれがスローモーションのように感じたんだ。
下がっていくウィンドウと共に
日差しが遮られていく。
徐々に見えていく社長の姿に思わず絶句した。
『!!』
なぜ春香がここに?!
春香は10年前に死んだはずなのに...