ガチャっ


キーっと音を立て開かれた扉。


『ご協力ありがとうございました』


そう言い警察の誘導と共に扉から出てくるのは
俺達と同じく事情聴取を受けに来た
春香そっくりの女...。



女は迷惑そうな顔をして出てくると
俺達がかけている警察署内のロビーに足を向けてやってくる。


俺達に気付いて足を止めた女は
一言



『全くっあなたの友達ってどうなってるの?』


なんとも彼女らしい言葉を吐いて
警察署内を去っていく


意気消沈してる俺達に向けてそんなこと言わなくてもいいだろうと思ったが

彼女からしてみればいい迷惑だろう。

部下には死んだ人間の亡霊と勘違いされ
たまたま気分転換で訪れた場所でも勘違いされ
おまけに殺人事件の重要参考人として警察署まで出向くことになろうとは
お嬢様としてあり得ない話だろう。

まぁ
あの様子だと
藤堂社長が事件に絡んでいると結び付かなかったんだろうな...

だって春香は10年前に死んでいるんだから

藤堂社長が春香で
しかも、名前を変え天下の大手企業の社長を務めているなんて

それこそおかしな話だ。

もし、仮にそうだとしても
地位も名誉も手に入れた
そっちの方が幸せじゃないか

わざわざ10年経って復讐する理由がわからない。



『もう、帰ろう』


そう切り出した登戸によって
俺達はまたそれぞれの帰路に着く。