『はぁはぁ』
そして今に至る。
季節は夏真っ盛り。
最近ではクルーウィズ等と言って
夏の装いは軽くなったというのに
時代に乗っ取り節電ときたもんだから
大きいビルの室内は熱気にこもり
真夏の炎天下に晒されてるのと全く変わらぬ状況だ。
そして、ここは従業員通路の非常階段。
社員一同必要最低限以外はエレベーターエスカレーターは使用禁止と定められている。
俺はこの先無限に続くであろう長い長い道のりを一段一段上っていく。
『ったくなんで俺がこんな目にっ』
くっそ
これならまだ営業で外回りやらされてた方がましだっての
滴り落ちる汗がワイシャツを濡らす。
初日だというのに
ワイシャツは水を被ったかのような濡れよう。
脱水で死んじまうつーの!!
文句を思ってもこの長く続く階段を上らなければならないのは事実。
『上るしかねぇ』
そう言って一段一段上り上げる。
やっと見えた5Fの文字。
『つ、着いた...』
とりあえず
便所にでも行って
この汗だくのワイシャツから着替えないとな
汗でまみれたワイシャツ姿で流石に
人前には出られない。
こういった時のために営業時代
何枚もワイシャツをストックしといて良かったと思った。
人事異動は不本意だけどな...
ってそうはしていられないと思い
重たい扉を重たい荷物を片手に開け
俺は目的のお手洗いを探す。
途中途中ですれ違う人には好奇の眼差しで見られる中
キョロキョロと目的のお手洗いを探す。
