『先輩!部長がお呼びですよ!至急らしいです!』


書類作成に追われていた俺は
部下の言葉に驚いた。


普段滅多に人を呼ぶことのない人間に呼び出され
しかも、急ぎごとだと言うなれば
これはなにかあるに違いないと。

ほぼ1日の大半を机に向かい
ボリボリと頭を掻きながら
部下が作成した資料を読むことしか
頭を働かせない人間だ。

身体は今にも張り裂けそうなくらいのびちびちのワイシャツに
脂ぎった顔から汗が流れワイシャツを染める。

生活習慣病と呼ばざるおえない見てくれの人だ

さすがに定年前に引退宣言でもするのか?

俺は浮き足だつ思いを隠せず
社内は走るのは厳禁にも関わらず
その足は部長室前に辿り着いていた。


乱れた呼吸を抑え

コンコン

とノックをし入室する。


呼吸を抑えられても
高鳴る胸の高まりは収まりきれやしないのを感じた。



部長と向かい合い
さも普段と変わらぬ様子で部長に問う。


『部長急ぎのご用件というのは?』


頭を掻きながら
やる気のない顔の部長に
相変わらずだなと思いつつ
その言葉を待つ俺。



だが、それは思いもよらぬ言葉だった。




『人事異動だ』


『はっ?』


思いもしない言葉に頭の思考が停止する。


部長はそんな俺の事など興味がないのだろう。


ただ決まった事だと言って
言伝てに託されただろう手紙を時折言葉に詰まりながら読む姿を
ただただ呆然と眺めてるしかできなかった。