『あなたいま変なこと考えたでしょう』


ギロリと睨む社長。

まぁ鋭いことやら


『あら、汗臭くないのねぇ』


思わずピクッと反応する。

おかげさまで階段上り降りがきいて
こっちは筋肉痛ですよ!


『社長が昨日、エレベーターを使えとおっしゃったお陰でしょうか』


皮肉を込めた一言を社長にお見舞いする。



『あら...そんなこと言ったかしら?』


一瞬、ほんの一瞬きょとんとした顔をしたが

直ぐ様意地悪な顔つきに戻り


『あんまりにも不憫で言ったわね。フフっ』


不適に笑った。


俺は
ったく朝からお嬢様の
お守りに付き合わされてやんなっちまうと思いつつも



昨日と違い社長に春香の面影を感じなくなったのが不思議だった。


まぁあれだけ似てる人を見れば
昨日は動揺しすぎたのかもしれない。



この10年間ずっとしまい続けた春香との記憶だ。

もう俺の中で春香は本格的に過去の人物になり俺なりに乗り越えているのかもしれない。