それは彼の答えなのだろうか。
「まあ、そんなところ」
 そう言いながら私も柵の方へと歩く。
 柵はカシャン、という音をたてる。芽を瞑れば風がすっと抜けた。

「なぁ、奈穂」
 隣から彼の声がする。どこを向いているかわからない。同じ、これから滅亡する街を見ているのかもしれない。


「これも何かの縁。今日一日俺と過ごしてみない?」


 目を見開いて彼の方を見る。
 その顔は案外近くにあり、ニコニコとしていた。

「俺は蓮」
「...奈穂」
「知ってるよ、さっき聞いた」


 やっと眠りから覚めたみたいだ。滅亡までの一日が始まる。