ぐらっと視界が揺れる。その瞬間、彼?彼女?は私の元へ走ってやってくる。

「っ...あっぶねぇな!後ろ見ろ!バカやろう!死ぬ前に死ぬ気か!!」
 いつの間にか知らない人の胸の中にいる。...男だ。この人は男だ。
 多分手を引いてくれた反動でこうなっているのだろう。と冷静に考える自分が馬鹿みたいだ。

「で?誰?」
 すっと距離を置いた彼は私に聞いた。
「...奈穂。奈穂っていうの」
「ふーん。奈穂ね。奈穂は何でここに?」
 そういうと、彼は屋上の柵の方へと歩いていった。
 空は滅亡を迎えるというのに、元気のようで。滅亡を迎える準備が整っているようだった。

「最後を見るため?」
 彼は柵に体を預けて私に言った。