I line xx

舞台から落ちる夢を見て


朝早くに目が覚めた


時々見る夢だった


意識が戻って目を開けると


部屋はまだ薄暗かった


夢だと判っても寝ぼけていたので


ホントにそうなったら


どうしようと考えていたが


胸のあたりにあった


愛果のおでこの温もりと


彼女の髪から香る柔らかくて甘い香りが


心の不安を温かいものに変えてくれた


腕の下にある愛果の寝顔を見つめる


目を閉じてすやすやと眠る彼女


まるで小さな子供のようなその寝顔を


見ていたら


ほっとして幸せな気分になった


ずっと見たかった彼女の顔


ずっと感じたかった彼女の体温


柔らかな髪


今、俺の腕の中にある


それがこんなに満たされた気持ちになるなんて


そして


また、夕方には東京へと戻らなくてはならない


彼女のいないあの部屋へともどり


今夜も一人で寝るのかと思うと


正直、このまま朝が来なければいいのに


と思い始めていた


そして、その気持ちが舞台から落ちる夢を


自分に見させたのではないかと


思った


彼女の寝顔をこうして見ていたい


今夜一人でベットに横になる時


彼女の寝顔を思い出せるように


薄暗い部屋のなかで


そう思いながらこれからの事を考えた


昨夜のライブでバンドの気持ちが


同じ方向に向き始めたのを感じた


客の反応も上々だった


店の店長もスタッフもご機嫌で


誰もが幸せそうだった


皆これならいけると思ったのだ


今回のツアーもあと少しで終了だった


新年を越して東京で最後の公演をすれば


次の事を考えなくてはならない