I line xx

「今日は来てくれてありがとう。終わったら行く



待っていて。」



それだけで充分幸せだった


待ってるねと返事を送り、空を見上げた


寒い夜の空気を自分の吐く息が



見上げる星空を曇らせた



歩きながら考えるのはハルのことだった




東京と名古屋


離れて暮らす生活


離れていることも心配だったけど


本当に一番怖かったのは


東京に住むということだった


名古屋にいれば


蘭も両親も友達もいる



子供の頃から住み慣れた街で



仕事の人間関係もそれなりに楽しかった



特に縁がなかったことと


名古屋にいて不便を感じなかったこともあって


東京に住みたいなんて考えたことも


なかった


住み慣れた名古屋から離れるのが


本当はとても怖かったんだ


大好きなハルを苦しめたくない



それが原因でハルと別れてしまうのでは



ないかという不安をいつも感じていた


喧嘩してボロボロになって


名古屋へ帰ってくるそんなことが


あるのではないかと




今の私は違う


一瞬でも一秒でも


ハルと離れているのは


もう嫌だ


本気でそう思ったんだ


あのハルの演奏を聴いてしまったから



今の私は


ハルと離れて暮らす毎日の方が


辛い



それくらい


ハルは大きくて優しくてあたたかい


そんな人は


私にとって名古屋には何処にもいないと


気がついてしまったのだった


もうハルの腕の中が



私の場所になってしまったのだ