I line xx

その気持ちが愛果を会場から


動かせなくなっていて


暫く椅子に座り


周りの人達を観察させていた


そこへ


愛果に話しかける男性がいた


今時の髪型をした


例のハルのマネージャーだった



彼は少し愛果を覗き込むように


話しかけてきた


「愛果さんですよね。」


寂しさと切なさで心は張り裂けそうだった


だから、そう声を掛けられた時


驚いて少し飛び上がってしまった


それが、返って彼に申し訳なくて


愛果の口からお詫びの言葉がこぼれた


それを聞いた彼のほうが気を使って


申し訳なさそうに頭を下げた


それを見た途端


気持ちが現実に戻って来たのが自分でも判った


「すいません、ハルはまだ少し残って


片付けなんかしなくてはならなくて。」


そう教えてくれた


それだけ聞くと諦めもついた


愛果は笑顔で教えてくれてありがとうございますと


頭を下げた


「ひょっとして、一カ月前名古屋でのライブに


いらしていませんでしたか。」


そう、彼が尋ねてくれた


あの寒い夜を愛果は思い出していた


今夜は彼が話をしてくれたから


あの日ほどの寂しさはない


少なくとも


ハルが私を忘れていないということだけは


伝わってきたから


その気持ちが愛果を強くしていた


「はい、彼を驚かせようと内緒にして


行きました。あの日は小さなお店のイベントだったから


ハルに声を掛けれなくて


そのまま帰ってしまいました。」


そう言って笑ってみた


終わったことだ


所がそれを聞いた彼は


驚いて悲しそうな顔をした