I line xx

演奏が終わり


少しずつ会場に柔らかな灯りが戻ってきた


それと同時に


騒めきも戻ってきた


皆その途端口々に今日の演奏について


少し興奮気味に話し始めた


誰もが、今日の演奏に、驚き感動して


誰かに話したくて仕方がなかった


演奏はシャープでキレがあり


完璧だった


演奏者が殆ど新人であったので


勢いもあり、最初から最後まで


演奏がダレることもなく


全ての演奏が終わったと判っていても


まだ演奏を聴きたい


聴いていたい


もう一度


そう思っていたのだ


その騒めきの中


愛果はいてもたってもいられなかった



あの演奏を聴いてしまったからだった


それは


今夜の演奏の中で


唯一のバラード


演奏する前にハルが今日の為に作りましたと話していた


そして愛果の方をチラリとみたのだった


題名がYOUという曲


照明が変わりハルだけにスポットライトが


当たった


柔らかくて可愛らしい曲


何より真っすぐなバラード



そのメロディ-ラインの美しさに


演奏が終わっても


一瞬拍手が起こらなかった


皆まだその曲を聴いていたかったのだ


その優しくて美しい曲を


次の瞬間、その沈黙を破る様に


その日一番の拍手が起こった


皆立ち上がり


暫く拍手は鳴りやまなかった


その拍手の中で


彼は嬉しそうに微笑み


会場に居る人達に頭を下げた


そして、また愛果の方を見つめたのだった



それだけでもう


なにも言わなくてもわかった


YOUは私なのだ


その曲を聴いてしまった私は


もう


ハルが恋しくて恋しくて


たまらなくなった


残りの演奏も


彼ばかりを見つめて


彼に触れたくて仕方がなくなってしまった


周りの女性客も同じらしい


口々にハルの話をしている


この後どうしようという話を


今夜のハルとはしていない



いつも大抵


ハルはメンバー達と今夜の演奏の


反省会から飲み会をする


判っていても


とてもハルに今すぐ逢いたかった