I line xx

もう彼は私の一部の様になっていた


そう感じたのは


あの風邪で彼がダウンした


あの日だった


それまでは仕事の忙しさに


現実を見ないふりをしていた


彼が大好きなのは


変わらなかった


だから自分は大丈夫と思っていた


自分は大丈夫だと思っていたのに


新幹線でいつでも行けると思っていたのに


いざ現実に彼が倒れても


彼の傍にいられないことが


こんなにも寂しくて不安になるとは


正直自分でも考えもつかなかった



名古屋から東京までの距離の現実が


私を慌てさせた


ハル、もしあなたが私を受け止めてくれるなら


私は今すぐにでもあなたの所へ行きたい


本気でそう思ったんだ



誰にもあなたを渡したくないって


あの日本気でそう思ったんだよ



まだ主役のいない


ステージをぼんやり見ながら


私はその気持ちと向き合っていた


先ほどから隣に座った


同じ年齢くらいの二人連れの女性たち


片方の女の子はハルの大ファンらしい


先ほどからもう一人の女の子に


ハルの事をずっと話している


彼女もハルが好きなんだ


ごめんでも、どうしても


彼だけは誰にも譲りたくない


私の中で彼の代わりなんて


何処にもいないから


音楽に対して真っすぐなのに


それ以外の事には


少し不器用


でも、そんな彼だから好きになった



そんなあなただから信用できたんだ


そんな事を思いながらステージを見ていると


BGMが途切れ、会場が暗くなった


そして一瞬の沈黙の後


歓声と共に演奏が始まり


ステージの中央に


スポットライトを浴びて


金色のサクスフォンを持った


愛しいハルの姿がパっと現れたのだった