I line xx

何も考えたくなくて


車道を車が通り過ぎるのを


ぼんやり眺めていた


立ち止まると


途端に疲れが


足元にあつまり


足がいつもより重く感じてそこから


動きたくなかった


信号が何度か変わって


車が通り過ぎるのを


見送った時


ポケットの中のスマホが鳴った


電話はマネージャーからだった


ライブハウスに残り


手続きを済ませた彼が


心配して電話をくれたのだった


「ハルさん今、どこですか


今なら東京行きの終電に間に合います


私はそれに乗ってかえるつもりなんですが


どうしますか。」


そう言われて時間を確認した


彼女に逢いに行こうか


今日のこの日の為に


二週間ほどスケジュールをタイトにした


それでも何とかやってこれたのは


彼女に逢いたいという気持ちだったのだ


けれど、次の瞬間


明日の夜もステージがあったのを思い出した


「一緒に行くよ、新幹線の改札口に行く」


そう言うと電話をきった


そこへ愛果から電話がかかってきた


いつもの穏やかな彼女の声


「ハル元気?」


彼女の部屋までは電車で30分



こんなに近くにいるのに


「元気だよ。」


そう言うのが精一杯だった


今から愛果の部屋に行きたい


そう言いたくなる気持ちを


抑えるのがやっとだった


交差点の下が地下鉄の駅だ


駅に向かって歩き出した


「愛果こそ風邪なんてひいてないよな。


寝る時に布団とか蹴とばして寝て


寒くて起きたりしてないか。」


そういうと、愛果が電話の向こう側で


怒っているのがわかった


そんな事するけないでしょ


そう言って笑った


そうだ、愛果には俺がいないと


だめなんだ


「愛果は俺がいないとダメなんだよな。」


そうふざけて愛果に言ってみた


「そうだよ、ハルがいないとダメなんだから


早く迎えにきて。」


人影もまばらな夜の地下鉄のホームで


その言葉に俺は瞼を閉じた


俺を必要としてくれる人がいる


それだけでただ嬉しかった