「振り返らないでください。」
ぴたっ、と体が止まる。
強めに発言されたその言葉に私は従った。
「僕を探さないでください。
それより、かえでに聞いてほしいことがあるのです。」
私に、聞いてほしいこと?
「そうです。」
夢の中なのに、なんで私以外の人とまともに会話してるんだろう。
「夢の中、と言うより精神世界というべきでしょうか。」
えっ!?私の思ってることが伝わってる!?
「喋るより、楽でしょう。
話が逸れました。
かえでに聞いてほしいこと、それは」
「今、この時間。
今現在のかえでの精神世界でのこの時間が終わったら、すぐにあなたの人生の分岐点がやってきます。」
……は?
分岐点?私の人生??
「思い当たりがあるでしょう。
かえでがさっきまで考えていたこと。」
えっと、白狐組に入るか、入らないか、だったかな。
「かえでを襲ったあの男達、覚えてますか。
かなり凶暴でしたね。まあ僕が何とかしましたが。」
じゃあ、電信柱を壊したのも曇天を倒したのも、光さんの銃撃を避けたのも……!?
「はい、まあ。
かえで。白狐組に入ればそれ以上の災いが起こります。」
そうだよ、ね。だって光さん銃もってたし、他の人だって只者じゃ無いはず。
ま、真唯だって、きっと。
「分かっているならいいんです。僕はかえでを幸せにしたい。
かえでが満足する選択をして下さい。
僕はそれに従います。」
……白狐組に入っても何も言わないの。
「ええ。」
その場から逃げ出しても?
「かえでの選択ですから。」
君は助けてくれる?
「……。かえでが、望めば。」
