白い狐は出会いの季節






「あの、
本当にすみません。

さっき散々なこと言ったのに、ここまでして貰って……。」



「謝ることは無い。いきなりこんな事に巻き込まれて気がたっていたんだろう。常識的な反応だ。


じゃあ行ってくる。」


「はーい」


「行ってらっしゃい」


「桜井さん!ゆっくり休んでくださいね!!!」



私は今おじさんの車の中。


日本の車じゃないからか、私から見て運転席が左側、助手席が右側になっている。


さっきまではこの人達にぎゃんぎゃん言ってたのに、今は大人しく助手席に座っている。


……全く、今日は光さんに流されてばっかだ。


車にエンジンがかかり、どこかクラシックな雰囲気を持ったこの車とは不釣り合いな近未来的なカーナビゲーションの液晶画面がついた。


「行き先を設定してください」と、映し出された。


おじさんは素早く、慣れた手つきで情報を打ち込んでいく。



しばらくして、マップに赤い印がついた。



「ここがお前の家か?桜井花楓。」



「あっ、はい多分……。」



いきなりフルネームで呼ばれ全身に力が入る。


答えも曖昧なものになってしまった。



「繁華街とはかなり離れた場所だな。小鷹からは近いが。」



「かなりの方向音痴ですね私!!」



だってあの時は正直どこ歩いてるかとかどうでもいい程自棄になってたんだから、



数時間前の自分の行動に後悔と恥を感じながら心の中で自分の事を思いっきり笑ってやった。