場所は変わって校内の廊下だ。



城内先生のあとをついて行くように、私は歩いていた。



「しかし珍しいな。」



城内先生は口を開いた。



「え、な、何がですか?」



まだ、緊張が解けない私。いきなり話し始める城内先生に驚きながらも言葉を返す。



「普通、一年の春に転校してくるか?わざわざ田舎の方から都の方に引っ越してくるなんて。
何が家の事情でもあんのか?」



人に聞かれて改めて考えた。
んー。確かにそうだな。なんでこの時期に引っ越したんだろ?



家の事情って言っても……。



「いや、詳しいことはよく分からないんです。親がいないので。」



「え、やば。俺なんかまずいこと聞いたか?」



城内先生は申し訳無さそうに言った。



「そんな事ないです。一人暮らしって訳でもないし、ちゃんと親戚に面倒見てもらってます。」



これは事実だ。今私が知ってる限り唯一の親戚。お母さんの妹…まぁ、私のおばさんに当たる人なんだけど……。


「そっか。あ、そんなことよりお前気をつけろよ。」



城内先生は話題を変えた。
「気を付けろ」?……何に?



「お前なんか真面目そうだからさ、この学校結構やばいやつの塊だから。」



城内先生は、そう言って教室の扉を開けた。


「えっ?やばいやつって?!」


そんな私の言葉は遮られた。



城内先生の言っていた意味は、扉が開いた数秒後にわかった。