時間列車

ある日の朝、郵便受けを見てみると、其処には1通の手紙が入れてあった。見ると、母からだった。僕は気になったので封筒を開けてみた。
[私の大事な息子、孝雄へ]
父には思いを伝えたから、孝雄あなたにも伝えなきゃね。でも卑怯だよね。口で伝えないなんて、許してくれるかな?あなたは幻想の世界なんか信じる?私はね、もしあったら絶対行きたい。それでね、孝雄をずっと守ってあげたいと思うの。こんなのはお母さんの弱音と思っていてくれたら良いよ。母さんが肝臓癌だと宣告されたのは丁度12月の半ばぐらいだったかな。最初は信じられなかった。だってあまりにも急だったから。同時に悔しかった。何であなたを見守る事が出来ないのだって……。きっと気が弱かったんだろね。けど、やっぱり最後ぐらいはずっと笑顔であなたと過ごしたかったから、お医者さんにオッケーをしてもらったんだ。そんな僅かながらでも、今困っているあなたを助ける事に全力を注いだの。そしたら時間が過ぎていくのが早く感じて、寝る前もっと、あなたや夫と過ごしたいとずっと思っていたの。だから幻想の世界が存在したらなって思うの。もう少ししたら私はあなたを側から見れない世界に行っちゃいます。だから辛い事が起こっても慰めたり、前のようには出来ない。けど、逃げても良いの。あなたがずっと楽で居れる空間に。お母さんはずっとあなたの味方です。天国から何時も見守ってるからね。 これからもずっと元気で頑張るんだよ。  ♡お母さんより♡

僕は泣いた。母が最も愛情の込めた誕生日プレゼントを送ってくれた事に気付いた時に。