真夏。
クーラーの効いた県立水原高等学校2年4組の、教室の扉が開く。
その扉から一番近い席に座っていた僕は、扉を開いた人物を見てため息をつく。
なぜなら、そこには馬がいたから。
「馬が人間の学校に何か用?」
僕は素直な人間なので、思ったことを素直に口にしてみた。
するとその馬は僕の頭をかるく叩いてきた。
馬のくせに結構痛いもんだ。

「何度も言わせないでよ瀬谷くん!この髪型はポニーテールと言って、馬ではないのだよ。」
「はぁ?だから馬のしっぽだろ?馬じゃないか。」
「むきー!そうじゃなくてぇ!」

どうやらその馬は、ご自慢の馬の尻尾を左右に揺らしながら僕に何かを言っているようだったが、僕は一切答えない。