その恋、逃亡中。



くるみは、結局、アパートを変わった。巻きこまれそうな事件から、逃げるためであった。アパートの管理人は、急に引っ越ししようとする彼女にいろいろ理由を尋ねたが、

「東京の生活に疲れたから、逃げ出すの」

と答えた。

「じゃあ、くにへ帰って結婚ですか?」

「ご想像に任せます。とにかく逃げ出すんです」

『逃げる』という言葉に、彼女は一つの意味を含めていた。『信二から逃げ、彼とは他人になる』という意味であった。

この逃亡は、一応、成功した。信二からはなんの連絡もなかった。
やがて、彼女は、新しい恋人を見つけるであろう。





だが、そのころには、うまいトリックを使って、くるみから逃亡した信二にも、新しい恋人が出来ているだろう。



終わり。