恋 × 練習

「…おれと付き合ってください。」



俺がそう言ったら、その人はいつもと違って怪しげに微笑んだ。
そうして、小声で言ったんだ。



「予想通り…このまま行けば」


本当に小声だったんだけど、耳が良過ぎる俺には聞こえてしまったんだ。



「予想通りってどういうこと?」



「そ、そんな事言ってないよ?」



最初の内は、そんな感じだったんだけど。
話して行くうちにその人の性格が変わっていってしまった。



「バレちゃったら仕方ないかな。」



性格だけなら良いけど、その後の言葉が、俺を混乱させた。



「秋くんを利用しようと思ったの。…を陥れる為に。」



その陥れる相手は俺が良く耳にするある人だった。
そんな事はしてはいけない事だし、大体その人は俺がしていい人じゃない。
…それに、何であの人を陥れるのに俺を?



勿論、して良い人悪い人は無いんだけれど。



それに俺を利用しようとしたって。
俺は自分の気持ちが分からなくなった。



俺が怒って何になる?



好きってなんだろう。