1ヵ月後、イギリス


葵の両親の墓の前に紫月と葵は立っていた。


葵は母が大好きだった真っ白な百合の花束を抱えている。


2人は結婚報告に来たのだ。


正式には明日、モナコに飛んで結婚式を挙げる。





「パパ、ママ、美緒・・・久しぶりだね」


そう言って百合の花束を墓の上に置く。


「あたし、紫月の奥さんになるの 喜んでくれるよね?みんな紫月のファンだったもんね 幸せになるから天国で見守っていてね・・・」


最後の方は涙で声がかすれた。


そんな葵の腕をしっかりと紫月は支えてくれている。


「教授、理紗子さん、美緒ちゃん 葵をいただきます 必ず幸せにします」


葵は紫月の端整な顔を見た。


紫暗色の瞳が優しくあたしを見つめていてくれる。


遠い昔を思い出した。


あの時、紫月はただの憧れの人でしかなかったあたしの初恋の相手。