「葵、榊が来たよ」


葵はクッションと毛布に包まれて暖炉の前で本を読んでいた。


ベッドで眠れと言っても、葵は退屈だと言って仕方なく紫月がリビングルームの暖炉の前に居心地が良いように作ったのだ。


紫月にとってはそんな事も可愛い我が侭でしかない。


本を置いて紫月を見上げる瞳は眠そうに見える。


「はい」


葵が立ち上がろうとする。


「葵ちゃん、そのままで良いよ」


そう言ったのは戸口に姿を見せた榊医師。


「おはようございます」


榊を見て笑顔を向ける。