私の名前は阿佐ヶ谷柚姫。

自分で言うのもなんだけど、正直私は、生まれながらの勝ち組だ。

父と母は美男美女夫婦で、姉は有名女性誌の専属モデルをやっている。

父は複数のブランドを擁するアパレル会社の社長で、母はその内のトップブランドのデザイナーリーダー。

お金も、地位も、美しさも、すべてを持っている家族だ。

家族の栄光を我がことのように自慢してはいるけれど、私だって、家族の七光りに甘えてその蜜を吸っているだけの木偶の坊じゃない。

血の滲むような努力を重ねて、最高のプロポーションと美貌を維持してる。

肌は雪のように白く、卵のように滑らか。

隙無くカールした髪は艶やかで、絹のように美しい。

メイクは薄すぎず、濃すぎず微妙な均衡を保っている。

中学時代は全女子生徒の頂点に立っていた。

私に逆らえる女なんて居なかった。

教師も先輩も、腫れ物のように私を扱う。

誰もが認める学園の女王だ。

唯一足りなかったのは、私のそばに寄り添う王子様。

従者なら男も女も沢山いたけれど、私と対等の立場で居られるような男、つまり彼氏はいなかった。

私に釣り合う男も、私の心をときめかせる運命の人も、15年生きてきて、ひとりも、居なかった。

だけどーーーー

高校の入学式で見つけた、あの人なら。

この私にふさわしい、王子様になってくれるはず。