それは部員全員が知っていた。

勿論、優香も。

前に立つ事、指示・指導することが増えた私。

言いにくくても、言いたくなくても言わなければならなかった言葉。


「優香、もうちょっと頑張って練習して。」

「優香、そこの手違う。」

「優香、立ち位置もっと中。」


注意を飛ばす度、優香は決まって誤魔化すように曖昧に笑った。

それにイライラしなかった訳じゃない。

でも、それは他の部員に対するのものは少し違う。

もう少し、もう少しだけいろんな事を考えて気にしながらやってくれれば私がこんな事を沢山優香に言わなくていいのに。

この頃には私と優香の差は開き過ぎてた。

それこそ、修復不可能なくらいに。

その事に負い目と後ろめたさを私はずっと感じてた。

他の部員を見ながら、いつも視界の端では必ず優香の姿を確認した。