蝶の様に儚く、蜘蛛の様に冷たく

 首領への報告も終わり、未だ眠っている捕虜を拷問班へと連れていく。
 先程まで伸びていた春と虎夏も復活し、3人で地下の拷問専用部屋に向かった。
「一華た~ん!一葵く~ん!春だよぉ~!…っていない?」
「春ねぇだ!」
「春ねぇだ!」
「後ろにいるよ!」
「後ろだよ!」
 呼ばれて出てきた2人は拷問具の小さな隙間に入っていたようだった。
「お前らそんなところにいたのか!そこには入れるってことはまだガキだな」
「ガキじゃないもん」
「拷問班リーダーだもん」
「虎夏にぃに言われたくないもん」
「もう十分大人だもん」
 2人は子供っぽく頬を膨らませた。

 紅月一華(べにづき いっか)と紅月一葵(べにづき かずき)――2年前に12歳で拷問班のリーダーとなった双子である。「感覚操作」の能力持ちだ。
 一華の方は、腰まで伸びた黄緑がかった青の髪に黒い猫耳のカチューシャと緑の瞳、白のブラウスにループタイ、オレンジのスカートに合わせるような左は黄色にオレンジの水玉で右はピンクと紫の縞模様のタイツと黄緑のスニーカーを履いている。
 その上には右袖と左下が半分になっている血塗れの白衣を着ている。右手の手袋が何故か目立っていた。
 一葵の方も殆ど同じだ。
 唯、髪の色が緑で瞳は青、青の半ズボン、水色のスニーカー。白衣は左袖と右下が半分になっている。やはり左手の手袋が目立っている。
 何故、こんなにあどけなく、幼い子供である二人がこんな班のリーダーなのかは語ってはいけないことが暗黙の掟となっている。
 だから、知っている人間は殆どいない。

「それで?誰と遊べばいいの!?」
「一人?二人?」
 無邪気な声に二人の残酷な運命の欠片は映っていない。
 だからこそ、この二人の事を見ていると寂しくなる。

 私だけが前に進めていないのだと、気づいてしまうから。

「今日は二人だよ。あとこれ。首領から預かってきたから」
「蜻蛉おじちゃんから?」
「お話リスト!!」
「蜻蛉おじちゃんって…一応、あの人も首領なんだぞ…?」
「一応って…」
 春と私は吹き出した。
「そ、そんなに笑わなくてもいいだろう!!」
 虎夏は真っ赤になった。
「ごめん、ごめん。あー、面白かった。それで、どこにこの人たち結べばいい?虎夏にやらせるから」
「俺ぇ!?」
「虎夏にぃ!やってくれたっていいじゃん!」
「じゃん!」
「うぐっ…わかったよ…やるから」
 虎夏は何だかんだ一華と一葵に弱い。
「やったぁ!じゃあねぇ…」
「その人がその椅子でー」
「その人が反対側のお椅子!!」
「はいよ」

 二人が指差した2脚のいすは向かい合っている。
 お互いの拷問風景(こんな言い方でいいのだろうか)が見える。
 確りと固定できるそれから抜け出すには肉片となり果てるか、解放してもらうかだ。

 虎夏は慣れた手つきで固定していく。
「終わったぁ…」と虎夏が言うのを、待っていたかのように春が口を開いた。
「ねぇねぇ。春もここにいてもいい?」
 虎夏が私に視線を寄越す。止めてくれ、という事を言いたいらしいが…
「いいんじゃない?ねぇ、虎夏」
 無視した。
「なっ」
「やったぁ!」
「それじゃ、私達はお暇するよ。後はよろしくね!」
「「「はぁーい」」」
 3人の元気な返事を聞きつつ、地下を出た。
 虎夏は引きずって行ったのは言うまでもない…よね?