人は無力だ。
 どんなに"愛"していてもその人を救えない。
 見守ることしか出来ない。

───彼女が失ったモノはもう戻ってこない。
 今も彼女は探している。
 でも俺は知っている。
 それが何処にもない事を。
 彼女に始めて"愛"を教えた人。
 同時に彼女の"師"であった人。
 俺よりもずっと良い人。
「…クソッ。探した所で何があんだよ…」

 俺の名前は多乃目鈴。
 マフィア幹部。「黒蜘蛛」と呼ばれている。
 身体操作の異能を持つ。
 片想いのまま、何も出来ずに日々を過ごしている。
 それが俺だ。
 意気地無しで、寂しくて、冷たい。

 この話は俺と、相棒の海月茜の物語…