「はぁぁぁぁぁぁぁ…」

風音のため息が響く。
相当疲れたのだろう。そりゃそうだ。

「風音、大丈夫?」
「大丈夫な訳無いだろう…」
「お疲れ様」
「あぁ…」

散々着替えさせられ、しまいには写真の撮影会になっていた。
因みに今、手元にその写真があるのは…。

「あぁ…、最悪だ…。黒歴史だ…」

よし。言わないでおこう。

ふと、落ち込んでいた風音が顔を上げ、に言った。

「なぁ、ずっと気になっていたんだが…」
「姐さんは若干ロリコン入ってるよ?」
「そうなのか…ってそうじゃない」
「じゃあ何さ」
「いや、その写真…」

まさかバレたか!?と恐る恐る目線の方を見ると、一つの写真立があった。
あの写真は…

「あの写真に写ってるのって茜と誰だ?……茜?」
「…あ、あぁ、ごめん。あの人は私の師だよ」
「師…か」
「うん。漣さんって呼んでいたんだけどさ……」

何かが湧き上がってくるのを必死に抑え込む。
想い出とか、教えて貰った事とか、恋愛感情とか。

「…茜?」
「懐かしいな。もう、会えないんだよね…。漣さんとは」
「……もう亡くなっているとかか?」
「…うん。多分、もういない」
「そうか…それは済まない…」
「いいよ。気にしないで。私もそろそろ前に進まなくちゃいけないから」
「…」

風音は何かを言いかけて、飲み込んだ。
屹度今の私はひどい顔をしているだろう。
悲しいのと、寂しいのと、辛いのと、諦めと。

「…もし、今度良かったらその人の話を聞かせてくれ」
「いいよ」

拘束力のない、口約束。
でも、それさえ大切なものだから。

「今日は首領から早く帰っていいって言われてるんだ」
「そうなのか?だが、私は何処に行けば…?」
「今日は私の部屋に泊まってもらうよ。監視も兼ねてね」
「矢張り信用が無いな」
「私は信じてるけど、首領が念の為って煩くて」
「おいおい。あんまり言ってやるなよ…」

二人で噴き出した。
私達を沈みかけの夕陽が静かに照らしてる。