蝶の様に儚く、蜘蛛の様に冷たく

 ずっと前から分かっていた。
 過去から進めてないこと位。
 なんで、なんで彼奴に分かってることを諭されたのだろうか。
 脳内を占める苛立ちも、直ぐに悲しみに変化した。
 だが、その悲しみも部下が来たことで直ぐに心の底に押し隠す事になった。

「…あの、茜センパイ。この資料なんすけど」
「あれ?これ、春と虎夏が書くやつじゃないの?」
「え?そうなんすか?春さんと虎夏さんに、茜センパイのとこに持ってくように言われたんすけど…」

 うわぁ…、と頭を搔きながら紅葉は唸った。
 木枯紅葉(こがれ もみじ)――彼女は首領直轄部隊である四季部隊の副隊長である。
 16歳で何時も年相応の表情を見え隠れさせている。
 お団子に髪を結い、真っ黒なワンピース姿の少女である。
 私を“センパイ”と呼び、慕ってくれるいい子だ。
 何時も指揮官の春や虎夏に振り回されている苦労人でもある。

「あの二人は…。ほんと困った奴だね」
「ほんとっすよ。あーあ。あの二人に渡すの気が重いなぁ…。季楽(きがく)に任せちゃおうかな…」

 季楽っていうのは鈴ヶ宮季楽のことで、風音の弟である。
 因みに紅葉の同僚で四季部隊の副隊長だ。

「風音からの反撃が来るよ?」
「あぁっ…。どうしよう…。マジで…」
 項垂れているのは流石に見ていられなかった。
 あの二人を叱るついでにいいかもしれない。
 と、そこで気が付いた。
「あれ?春、拷問班からもう帰って来たの?」
「いや?一応両方に聞いておこうと思って拷問部屋にも行ったんすよ」
「…なんか、あの二人がごめんね?」
「…もう慣れたっすよ」
 よし。あの二人にお説教でもしに行くか。
「私も一緒に行ってあげるよ。あの二人をお説教しないと」
「ほんとっすか!?ありがとうございますっ!」
 こうして、2人で部屋を出た。








 この後、たまたま帰って来た春と虎夏を正座させてお説教をしたのはまた別の話―――