「ねぇ、次の教科なにー?」


日課くらい覚えとけよ



「やばい!リップ忘れたぁ〜貸して!」


人のリップ使うとかどういう神経してんのさ




当たりを見回すと地面にはほんのりと雪が降り積もり、街は魔法にかかったかのような色合いを見せていた。


12月。


教室の窓から見える景色は私の心を憂鬱にさせるには十分だった。




上條 末来 (カミジョウ ミク)。これが私の名。

しかし名前を呼ぶ人は限られていて、いわゆるクラスで私は浮いた存在だった。


『...上條さんってさ、なんかノリ悪くない?』

『うんうん。なんか愛想悪いよねぇ〜。』


そんな事分かってる。

何故か周りに興味が持てない。
人と人が仲良くしてたってそれはただの『馴れ合い』であって真の友情なんかで無いことは嫌でもわかった。



恋愛だってそうだ。

クリスマスになるとイチャイチャとし始める奴ら何なの系女子である私にはその神経が理解出来なかった。


...カップルなんてプリクラとって終わりじゃん。


そんな皮肉な事を考えているとそこに1人の女の子か現れた。


「...末来、あんたまた自問自答してたでしょ。だから友達できないんだよ。」


「うぐっ...。登場間際物凄いところ突いてきたね...。優ちゃん。」


昼休みだったため口に含んだメロンパンが飛び出そうになる。


この失礼極まりない女の子は唯一無二の私の友達である『猪瀬 優子』(イノセ ユウコ)。通称『優ちゃん』である。


この子は中学校からの友達で初っ端自己紹介で『人との馴れ合いが嫌いなんで近寄らないでください』とぶち込んだ私以上にやばい人だ。


なのにそれがウケたらしく友達は多い。


皮肉なものだ。殺意さえ覚える。




「まぁ人が信じられないのは分かるよ?でもそれだとせっかくの高校生活楽しめないって。ね?」



「...別に友人関係が愚かだって楽しめない訳じゃないし。」


最後の悪あがき、とでも言わんばかりに口を尖らせて言った。

すると負けじと優ちゃんも冷たく言い放った。


「...まぁそう思ってるならそれでいいと思うけど。あたし委員会あるから先行くね。」


次の時間は確か委員会の...。

優ちゃんは成績優秀、スポーツ万能、ついでに容姿端麗と来たもんだから男子もほうっておかないだろう。



それに比べて私は...。


やめよう。涙が出そうだ。





つまらない世界を横目に残りのメロンパンを口に放った。