「俺は今の玉木の方がいいよ。蒼とギャンギャンやり合ってるのも嫌いじゃないけど。面白いし、何だかんだお似合いだなって思ってるから。でも玉木、本当は静かで穏やかな性格じゃない?」

「えっ、どうして…」


玉木は新底驚いているのか、目を真ん丸に見開いている。


「もし強気な性格なら、やられたらやり返してると思うよ。でもじっと我慢して耐えてたんでしょ。人に強く言ったりするタイプじゃないんだろうなって。それから、しっかり自分を持ってるよね。辛い時、芯がなきゃ頑張れないよ。自分の中で揺るがないものがあるから、辛くても乗り切ってこっちに来たんでしょ?」


パッチリした目から涙がこぼれた。よくよく見ると長いまつ毛がしっかりカールされていて、薄いピンク色のアイカラーとネイビーのアイライナーが綺麗に引かれている。


「俺は一人でいるのが好きだし楽だから、一人が嫌だっていう玉木の気持ちは分からない。でも今の玉木は一人じゃないよ。少なくとも蒼とは本音で話せてるだろうし、俺はあんまり喋ってないけど…まぁ俺もいる。優斗もいいヤツだよ。それからなつみさんも」


玉木はハンドタオルで涙を拭きながら、鼻水をすすった。涙のせいでピンク色のチークが取れてしまっている。


「相楽くん、ありがとう。話せて楽になったよ」

「俺こそ、話してくれてありがとう」


カップに残っていたコーヒーはすっかり冷め切ってしまって、みすみさんにもう一杯注文した。


「玉木、チーズケーキ食べれる?」

「好きだけど…?」

「みすみさんのチーズケーキ、美味しいんだよ」


チーズケーキを二つ注文すると、みすみさんはホクちゃんの奢りだからと玉木に言っていた。こういう時に甘い物は元気が出るかなと思って。