「マジか…全然気づかなった」

「物陰からこっそり見てたから。並んで足湯入ってた所まではいいよ。でもアレ。お前がなつみさんと手繋いじゃったじゃん。しかもポケットに入れちゃって。それを見て美白がもう落ち込んで。俺はヤベー激ギレする!って思ったんだけど逆だったね」


そんなにガッツリ見られてたとは思わなかった…。自分で気づかずにやってたベタなシーンをよりにもよって、この二人に見られていたなんて。


「帰りになつみさんの車に乗せてもらったけど、静かだったろ」

「…言われてみれば確かに」


なつみさんの車は軽で五人乗り。助手席に俺、後ろに蒼と優斗と玉木。全然気にしてなかったけど今考えてみれば、玉木の声はほとんどしなかったような。


「電車が途中まで一緒だから話しながら帰ってさ。美白が、もうやめるって言ったんだよ」

「何を」

「北斗を追いかけ回すこと」


…追いかけ回されるのは玉木が蒼と仲良くなってから収まってるけど。なつみさんと初めて食事に行った日、校門に向かっていたらたまたま玉木と鉢合わせて。バーベキューに行こうと誘われ、断わり、玉木が追いかけてきて。ただでさえ待ち合わせの時間が迫っていたから全速力で走って大学を出た。

俺が気づいていないだけかも知れないけど、追いかけられたのはこれが最後。


「北斗となつみさんが一緒にいる姿を見て、敵わないって思ったって言ってた。バーベキューの時も俺らからしたらフツーに、普段の北斗じゃん。でも美白からしたら全部知らない北斗だったって」