幼稚園も小学校も面談の時に母はいつも言われたという。「北斗くんは特に親しい友達を作りません。仲が悪いというわけではなく、クラスメイトとは遊びますし、嫌われているという事もありません。北斗くん自身がどこか冷めているというか…一歩引いている気がします」と。
家が近所のヤツも何人かいたけど、放課後に一緒に遊ぶなんて事はあまりなかった。
それなら一人で好きな事をしたかったし。


「蒼とか優斗とか…ホント変わってると思うよ。俺なんかと仲良くて」

「変わってるなんて誰が決めるのよ?」

「…世の中?」


人は自分と違う人間に敏感だ。というか生き物全般そうなのかも知れない。


「普通だの変わってるだの言うけど、誰一人として同じ人間なんていないんだし、そもそも普通って何?って思わない?それぞれ考え方や価値観だって違うのよ。それなのにみんな人と同じ考え方や行動だと安心しがちで、輪から出ないように、追い出されないように合わせたがる。でも、ものすごく仲の良い友達が死んだら自分も追いかけて死ぬかって言ったら、誰もそんな事しない。それ自体が普通なのか変わってるのかなんてみんな考えないでしょう?」

「話飛び過ぎだけど、極論まで行ったね」


確かに追いかけて死ぬなんてあまり無いと思うけど。その行動については深く考えもしなかった。


「とは言え、まあ北斗は散々言われたからね、変わってる子だって。私も昔は悩んだけど、そのままでいいと思うわよ。北斗の場合は友達が何人いようが、本当に困った時に助け合えなきゃ意味が無いし、何でもさらけ出せる相手じゃなきゃ一緒にいても本音で何も出来ない。蒼くんと優斗くんはそれが出来る相手なんだから。でもノリで付き合ったり他愛もない話が出来る人だって気が合えば友達よ。特別親しくなくてもね」