塩顔男子とバツイチ女子



蒼はタッパーを取り出すと、野菜をさっそく焼き始める。
あとはみすみさんお手製のおつまみ。ポテトサラダに野菜のナムル、叩きキュウリ、トマトとチーズのカプレーゼ。バーニャカウダの準備もしてくれていたし、焼きおにぎりが出来るようにって、おにぎりと特製の味噌ダレも持たせてくれた。


「美白、ちゃんと挨拶しないと。最低限の礼儀。あと言う事あるんだろ」


蒼に促されて、仏頂面の玉木がなつみさんに近づいてくる。


「……玉木美白です。この前は失礼しました。暴言吐いて…。でも私、諦めてませんから」

「市川です。…美白ちゃん、でいいかな?」


玉木はそっぽを向いたまま小さく頷く。なつみさんを根っから嫌ってるってわけではなさそうだな。


「じゃ俺、なっちゃんにする!」

「蒼。なつみさんに失礼だから」

「あ、悔しいんだろ?北斗もそう呼べばいいじゃん」

「蒼は調子乗りすぎな」


優斗の正論に蒼はしょげている。いつも通りのこんなやり取りなのに、なつみさんと玉木は顔を見合わせて笑っていた。


「なっちゃんでもいいよ。私も手洗ってこようかな。お手伝いしないとね」

「じゃあ俺も」

「美白!肉焦げるからちゃんとやって」

「蒼くん、そこにいるんだからやってくれたらいいじゃない」

「お前が自分で言い出したんだろ。北斗くんに美味しいお肉食べさせたい♡って」

「そんな言い方してない」

「喧嘩すんなよ。仲良くやれー」


優斗は呆れたようにため息をついて、でも笑っていた。