何だかんだと残業になってしまって家に帰り着くと、ちょうど夕飯が出来上がっていた。ぶり大根に揚げ出し豆腐、小松菜としめじとさつまいものお味噌汁。
「なつみ、ホクちゃんの事どう思うの?」
「どうって…どういう意味で?」
「何とも思ってないって事はないでしょう」
…考えた事ないんだけどな。さっきもお似合いだなんて言われたけど自分では分からない。
「ほんとに考えた事ないんだよ。…不思議なんだよね。北斗くんと一緒にいて違和感がなくて。圭より年下なのに」
この前食事に行った時、私はごく自然な空気の中で過ごしていた。考えてみれば偶然会った時も北斗くんが持っている穏やかな空気の中にいたような気がする。
「年齢なんて関係ないのよ。それにね、若い男の子が年上の女にアピールするとしたらそれはものすごい勇気だと思うけどね。まぁ普段のホクちゃんの感じなら、そうやって行動出来るのは自然な事なのかも知れないけど」
「私もそう思う。カッコつけてる感じしないもん。圭はすごかったけど」
「あれはもうバカだったから」
今でこそ真面目にやってる圭も思春期にはヤンチャな時もあって。悪い事はしなかったけど、とにかくイキがってた。無駄にとんがって生意気で、髪の毛も長くて外ハネで前髪がやたら長くて。腰パンにチェーンをいくつもぶら下げてたり。
「お母さんには黙っててね」
「分かってるわよ。うるさいからね、芳恵ちゃんは。年下の男の子と出かけるなんて知ったら発狂するわよ、きっと。世間体がどうのって。そんな時代でもないのに。そんなのもう、私らが若い頃の話よ」

