「あの女の子、まだホクちゃんを追いかけてるんだ」
「はい。何かもう、色々ややこしくなって」
蒼くんが玉木さんを好きらしく、北斗くんを諦めさせて自分に振り向かせたい…という流れからこうなったと、北斗くんはため息混じりに言った。
「今度の祝日なんですけど、夕方から。なつみさん、都合つきます?」
「うん、いいよ。夜勤明けで休みだから。あとで連絡して」
「すいません、俺のせいで。忙しいのに」
北斗くんのせいではないから謝る事ないと思うけど。私の都合が合って良かった。
「なつみちゃんと北斗くん、お似合いね」
山城さんはまたニコニコして私達を見ている。
「年下の男の子も悪くないわよね?」
「悪くない。むしろ年下の男の子の方がいい。可愛いし」
可愛いっていうのは何となく分かる気がする。
でも似合ってるかどうかなんて考えた事もなかったけど。どう見ても姉と弟にしか見えないだろうし。
「他人から見て、似合う空気ってあるわよね。夫婦でも恋人でも、こうなりたいって思ってもらえる二人になれる事がいいと思うわ。私、みすみちゃんにも言った事あるし」
「ホクちゃん、良かったわね」
「え?」
ばあちゃんのウインク付きの一言に北斗くんは目が真ん丸。
「押しの一手よ」
「押しの一手」
押しの一手?私と北斗くんは顔を見合わせた。ばあちゃんと山城さんだけが笑っている。

