「はぁ~…」
コンビニのアルコール売り場で足を止めた。とりあえずビールかな。
今日は疲れた。とにかく疲れた。朝から新たな入居者さんの部屋をセッティングして、それから通院がある入居者さんを看護師さんと一緒に病院に連れて行き…入浴の介助も多かったし、それから諸々事務仕事。
気づいたら定時をとっくに過ぎていて。
ばあちゃんは今日、友達とディナーに行くって言ってたっけ。いいなぁ。私もたまにはオシャレして出かけたい。出かける相手がいないんだけど。
「なつみさん?」
落ちついた、ちょっと低い声に振り向くと相楽くんが立っていた。
「相楽くん」
「こんばんは。仕事帰りですか?」
「うん。ビールでも買おうかなって。今日は一人だから何もやる気が起きなくて」
…相楽くんて、シュッとしてるなぁ。顔も凹凸がハッキリしてほっそりしてるし、目元は涼しげ。
「ほんとは居酒屋さんとか行こうかなって思ったんだけど、車だしさ。一人で行っても味気ないし」
「そういう時は呼んでください。俺が付き合いますよ」
「えっ…」
相楽くん、ちょっと口角が上がってる。初めて会った時もこの前も無表情っていうか、表情が変わらなかったけど。今は優しい顔をしてる。
「なつみさんと喋ってみたいから」
「…じゃあ、今度」
「はい。楽しみにしておきます」
相楽くんの目が優しくて、彼が嘘をついていない事が分かった。

