「…お前、ホントに男だよね?」


蒼がまじまじと俺の顔を見てくる。


「男だけど」

「そのお姉さんが好きだって嘘ついたのは、そもそも何でなの?たまたま店に入ってきたから?それともちょっと好意を持ったから?玉木がまだお前の事を好きだとして、そのお姉さんとどこかで万が一出くわした時にどうなるよ。お姉さん、クソ迷惑じゃん」


それはさっき俺も考えてたけど。あの日、なつみさんに怒ってオバさん呼ばわりしたくらいだから、次は何をやらかすか分からない。


「…分からないんだよな」

「何が」


蒼は怒ったようなぶっきらぼうな口調で、大盛りの唐揚げ丼を口いっぱいにほおばっている。


「何でなつみさんの事、好きな人だって言っちゃったのか。なつみさんを見た瞬間、スローモーションみたいに感じちゃって。服装も髪型も顔も一瞬で認識して、気づいたら玉木に言ってた」


なつみさんは可愛い顔立ち。綺麗だけど可愛さが勝っていて、ちょっと童顔ていうか。

蒼を見ると口をポカンと開けている。口の中には食べかけの唐揚げ。


「蒼、汚い。唐揚げ見えてる」


ハッと気づいて物凄い勢いで噛んで飲み込む。


「北斗。それ、一目惚れだろ」

「一目惚れ?」

…一目惚れ。一目惚れって、あの一目惚れ?一目見て好きになっちゃうっていう。