塩顔男子とバツイチ女子



「そう。もう誕生日どころじゃなかったよ。何せ誕生日の十日前に離婚成立して、その後がバタバタだったから。気づいたら歳取ってた」

「今年はちゃんとお祝いしよう」


もうすぐ誕生日だからなつみさんの好きなケーキを用意して、プレゼントは何がいいかな?その前にどこでデートしよう。


「なつみさんの好きなもの、いっぱい用意して」

「ありがとう」


なつみさんは笑顔になって俺に抱きついてくれた。抱きしめ返すと緩く巻いているふわふわの髪が頬にあたる。体が離れると、俺はなつみさんの手を握った。俺よりずっと小さいけど、誰よりも働いている手。真冬はあかぎれや切り傷が治らないと言っていたこの手も、暖かくなった今は綺麗になってきている。


「なつみさん。俺と出会ってくれてありがとう。なつみさんのおかげで自分の知らない一面をたくさん知りました」

「私も北斗くんのおかげで乗り越えられた。私こそ、ありがとう」


きっとまだ知らない自分がいて、なつみさんの事も知らない事だらけで――でもこれから少しずつ知っていけたらいい。


「なつみさん、デートしませんか」

「どこに行くの?」

「水族館。俺、結構好きで」

「いいね。水族館なんてもう何年も行ってないなぁ。イルカショー見たい」


今までレジャー本なんて一度も買った事がなかったけど、書店で働いているからそれなりに売れ筋は分かっていて。その中から選んで買ってきた。


「ゴールデンウィークは休める分からないけど…土曜か日曜、北斗くんに合わせて休み取るよ。平日だとバタバタしちゃうもんね」


今年も平日は授業がびっしり。もちろん早く終わる日もあるけど、それでも夕方だから出かけるとなるとそんなにゆっくりは出来ない。