「ったく。おせーな」
この前、俺が三分遅れた時に怒ってたくせに。もう五分も遅れてる。別にそこまで怒ってるわけじゃないんだけど。
そもそも、北斗と一緒に買いに行ったチョコレートをちゃんと持ってきてる辺りがね。怒ったとしても説得力がない。
「蒼~!ごめん!」
大きな声がして辺りを見回すと美白が手を振りながら、こっちに向かって走って来ていた。
連絡があったのは今朝。“ちょっとだけでいいから時間ある?”なんて。腐る程あるっつーの。バイトのシフトも入れないで空けておいたんだから。
それでも素直になれなくて(がっついてると思われたくないし)、“くそ忙しいけどいいよ”って嘘を返した。きっと美白には見透かされてるような気もするけど。
「ごめん、遅れて」
「五分遅刻。時間は守れよな!」
「ちょっと、真似しないでよ」
やっぱり怒り切れなくて、二人で大笑いした。美白に本気で怒る事なんて、浮気は別としてほぼ無いと思う。
「これ、渡したくて」
袋の中には綺麗にラッピングされた丸い箱が入ってる。
「俺も、これやる」
「えっ?」
「逆バレンタインってやつ」
今朝、北斗に電話したらマジでバラの花束を買うって言ってた。美白は花なんて喜ぶのか分からないけど、黄色のガーベラを一輪だけ。花束なんて照れ臭いし、フラれたらその花はどうしたらいいのか分からない。
「…お花も蒼が?」
「当たり前だろ。そのチョコレートも美味いやつ」
美白は驚いていたけどすぐに笑顔になって。やっぱ好きだな、美白の笑顔。
「ありがとう…蒼から貰えるなんて思ってもみなかったよ」

