「お前達いいよね。長~~い春休みがあってさ」
優斗はここのところ服作りに追われているらしい。四月にある入学式の数日後に新入学生を歓迎するファッションショーが行われるから、舞台作りも全部グループに分かれて出す。加えて来月の卒業式でも先輩達の集大成のショーをサポートすべく、裏方作業がてんこ盛りだと嘆いていた。毎年の事ながら時間も体力も足りないとぐったりしている。
「もう俺、頭おかしくなりそう。この時期ホントに地獄。頭ん中ごっちゃごちゃだし、スケジュールはありえない事になってるし、夢の中でまで準備やってるんだぜ」
優斗の手帳は予定がびっしり書き込まれていて、その上バイトもしているから家には寝に帰るだけ。
「でもこういう思いも今年で終わりだろ?来年は自分の卒業式だけなんだから。その前に就職だけど」
「蒼、それは言うな。この地獄の最中に就活話なんてマジで首締めるぞ。一生恨むからな」
普段穏やかで怒ることのない優斗の目がマジだ。蒼はいつものノリで悪ぃ悪ぃと言っている。今のは完璧、蒼の失言。
「で?蒼は何の為に集合かけたの」
インフルエンザが完治したその日に蒼から集まろうと連絡があって、こうして男三人でカフェに集まっている。
「お前、相変わらず冷たいね。俺の心配もしないでさ」
「一回くらい首締められた方がいいんじゃない?テキトーすぎると玉木に嫌われたりして」
「その心配はない!大丈夫。今、いい流れだから」
付き合うのも時間の問題かな。俺が熱を出して寝込んでいた時も二人で水族館に行ったり、少し遠出をして美味しいと話題のパンケーキを食べて来たみたいだから。
「で、本題はバレンタイン」
「バレンタインかぁ~…今年も本命チョコは貰えない…」

