「昔から世間体ばかり気にしてたわね、私は。どっちが大事かなんて、なつみに決まってるのに」
「仕方ないと思うよ。ばあちゃんも言ってた。世間は他人の事には口を挟みたがるし、覗きたがるって。だからゴシップネタは尽きないんだろうし。この土地自体がそういうとこあるよね。やっぱ近所付き合いが親密だから何でもすぐ伝わっちゃうもん。学生時代なんて圭の事でしょっちゅう声かけられたよ」
考え方によっては私の離婚劇なんて連日報道されるくらいのビッグスクープなんじゃないかと思ってしまう。こう思えるようになるまで何だかんだ、ずいぶん時間がかかったんだなぁ。
「もう口出しはやめるわ。なつみだっていい歳だもんね。相楽くんと上手くやりなさい」
「ありがとう」
「分かってると思うけど、大学生なんだからね。まだまだこれからの子なんだから、年上のアンタがちゃんとしないと」
「分かってるよ」
先の事がどうなるかなんて分からないし、考えてもみなかった。私と北斗くんはまだ始まったばかり。しかも出会ってからそんなに経ってなくて、猛スピードでここまで来ている。
「お姉ちゃん、彼氏の写真ないの?」
「ない。撮ってないもん」
「え~。今度撮って見せて。絶対カッコイイでしょ」
「うん、カッコイイよ」
見た目も中身もかっこ良くて、しかも紳士。北斗くんはきっと、そんなことないと言うだろうけれど。とりあえず北斗くんに連絡しないと。ずっと私と母のその後を気にしていたから。
それからデートの約束をしよう。もうすぐバレンタインだけど何をあげようかな。

