これで忙しくないと言うなら、年末年始のなつみさんはどれだけ動き回っていたんだろう。よく自分の事をボロボロだと言うのも少し痩せたのも、実際に体験した今なら分かる。むしろ倒れないでくれて良かった。


「俺、マジ考えちゃって。自分達もいずれは介護する立場になるんだなぁって」

「そうだね。少子高齢化が進んでるから、どうしても高齢者が増える一方だし、施設に入れずに苦労してる人も沢山いる。老老介護にも限界があるし、介護疲れで起きる事件も増えてるからね。だから私達が出来る事は精一杯やりたいと思ってる。こうやって仕事を体験してもらって、介護を身近に感じてもらえたら嬉しいし」


俺はなつみさんみたいに、自分がやりたい事を仕事にするなんて出来るのかな。そもそもどんな会社に就職したいのかもまだ決まっていない。蒼は今バイトしているお店から誘われているらしく、多分そこに就職するだろうし。優斗もファッションの仕事に就く事は間違いない。


「シフトがめっちゃハードって北斗から聞いてるんすけど、なつみさん、辛い時ってないんですか?」

「あるよー。しんどいなぁっていつも思う。人手が足りない時なんて夜勤続いたり、中番で駆り出されたりして。でも私より大変な仕事してる人なんていっぱいいるし、仕事は何でも大変だよ。私はこの仕事には終わりがないと思ってるから、しんどくても辛くても辞める事はないと思う。自分が満足するまではね」

「…俺もそう思える仕事したい」

「蒼くんはファッションの仕事するんでしょ?やりがいのある仕事に出会えるといいね」


やっぱりなつみさんてかっこいいな。自分が選んだ仕事にきちんと誇りを持っていて、それをやり遂げるために毎日頑張っている。
なつみさんは座って間もないのに、入浴介助があるからと行ってしまった。俺も残りの時間、頑張ろう。